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『オールドテロリスト』   [村上龍]




村上龍は怒っているのだと思う。
龍さんのエッセイ、評論は、ほとんど全て読んでいて、波長が合い、影響を受けている。
しかし、小説を読むのはこれが3冊目か、4冊目である。

『限りなく透明に近いブルー』、『海の向こうで戦争が始まる』 と、始まりの2冊は読んだ。
それ以降、私自身がある程度、年を重ねるまで読むことはなかった。
30年以上の時間を経て読み、龍さんは怒っているのだと思った。





『オールドテロリスト』 村上龍/文藝春秋 (2015年6月30日 第一刷発行)
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p132
「(前略) 誰もが生き方を選べるわけではない。上位の他人の指示がなければ生きられない若者のほうが圧倒的に多く、それは太古の昔から変わらない。それなのに、現代においては、ほとんどすべての若者が、誰もが人生を選ぶことができるかのような幻想を吹き込まれながら育つ。かといって、人生を選ぶためにはどうすればいいか、誰も教えない。人生は選ぶべきものだと諭す大人たちの大半も、実際は奴隷として他人の指示にしたがって生きてきただけなので、どうすれば人生を選べるのか、何を目指すべきなのか、どんな能力が必要なのか、具体的なことは何も教えることができない。したがって、優れた頭脳を持ち、才能に目覚め、それを活かす教育環境にも恵まれ、訓練を自らに課した数パーセントの若者以外は、生き方を選ぶことができるわけがないし、生き方を選ぶということがどういうことなのかさえわからない。そういった若者にとって、人生は苦渋に充ちたものとならざるを得ない。苦痛だと気づいた者は病を引き寄せるし、気づかない者は、苦痛を苦痛と感じないような考え方や行動様式を覚える。同じような境遇の人間たちが作る群れに身を寄せ、真実から目を背けるのだ。
 病を引き寄せる若者のほうが、誠実であるのは言うまでもない。気づかない者でも、あるとき突然、真実に目覚めることがある。突然の目覚めによる苦痛は耐えがたいから、新興宗教に逃げ込む者も多いし、死を意識し、死を望む者もあとを絶たない。やがて彼らは、苦痛しかない人生だったら死んだほうがいいと、心からそう思うようになる。死は、苦痛からの解放だから、彼らは自分を殺すのを何とも思わないし、他人を殺すことも善だと考えるようになる。善は急げ、ということわざを、彼らは迷わず実行する。彼らは簡単に死ぬし、簡単に人を殺すようになる」
 アキヅキの話には異様な力があった。 (後略)






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全565ページ、1800円は安いかな。 と言っても、図書館で借りたんだけど。初出は、「文藝春秋」20011年6月号~2014年9月号である。 長い連載だったのだが、連載のお陰で、読者の緊張が維持できる作品だと思った。始めの方は、東野圭吾と錯覚する展開と語り口だったが、違うんだと、何度か否定した。

ある意味で恐い問題提起だが、日本国内でテロのあった頃の、イノチガケの緊張感は現在の政治家にはなく、しかし根こそぎ日本を造り替えねば、あるいはゼロにして再建せねば、もうこの国は衰退が確実だと、おそらく気づいた龍さんが、本当に怒っていると思った。

・・・サミット、大丈夫かなぁ。



ファイト!





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コメント 3

isoshijimi

仕事で時々都心に出るのですが、これだけ人が行き交う中で何かあったら・・・
と毎度思ってしまいます。
今日も都心方面に出ます。
あっちに行くの嫌だし、怖いと思います。
by isoshijimi (2016-04-28 06:46) 

hatumi30331

村上龍、大好きでした!
コインロッカーベイビーズ読んでからハマり・・・・
あの頃の本はいっぱい読みました。

今はエッセイが多くなったね。

彼の文章好きです。

北海道にも春が!!モクレン?コブシ?綺麗!^^
by hatumi30331 (2016-04-28 08:17) 

あるいる

サミット、ホントに大丈夫でしょうかね。
と、ココロのどこかで思いながらもたぶん大丈夫なんだろうなとなんの根拠もなく思う僕がいます。
それはそれなりに穏やかな生活が明日も続くだろうという、これまたなんの根拠もない思いになります。
テロだけでなく天変地異が起きるかもしれないのに、です。
しんどいコトもめんどくさいコトも後回しにし、これおかしいやんけ、なんでやねんと疑問に思うコトも後回しにし、口当たりのいい耳あたりのいい自分にやさしいコトについつい手が出てしまいます。
おかしいやんけと思うコトをおかしいと考えるのはしんどいコトですし、それなりの学習も必要ですから、めんどくさいのです。
世間のおかしなコトや世界のおかしなコト、理不尽なコトに目をつぶると世界は自分の周り10mになり、自分に甘くとてもらくちんになります。
そのシワヨセがヒタヒタと押し寄せていることにも気がつかないまま時間が過ぎて行くのは、個人的にはしあわせなコトかもしれません。
次の世代や他の人のコトなんかかまってはいられません。
そんな人間にはなりたくないと思いながらも、いつのまにかどっぷりと浸かっているのかもしれない今日この頃です。
庶民の日常ってそんなもんやろとどこかで開き直る僕でもあります。
怒るのも考えるのも知恵と力がいるものです。
どちらも僕には足りません。
だから、龍さんの作品により刺激を受けてしまうのかもしれませんね。
対戦車砲まで用意していた小説の中のテロリストたち。
現実に登場しても不思議ではない日本です。
明日も今日の生活が続いてくれるんやろか?
テロだけではなく、福島や熊本を遠くから眺めながらそんなコトを思いました。

by あるいる (2016-04-28 16:13) 

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